連載

2025.03

【第7回】カフェから見える風景

自分と他者の境界線

わたしが1型糖尿病を発症したのは49歳の時で、看護師として夜勤もしながら病棟勤務をしていました。病気そのものに慣れていないせいもあり、通勤ラッシュの電車の中で血糖値が乱れたり、2人で行う業務のときに補食のため、その場から離れることをなかなか相手に言い出せなかったりと苦労はありつつも、周りの理解もあり勤務は続けることができていました。そして50歳になり、年齢的な一つの区切りを意識するタイミングを迎えた頃、わたしにとって大きな衝撃となる患者さまの死がありました。

 

その方は高齢で寝たきりであり、家族の希望で延命はしないという意思表明がなされていました。わたしと同じ「1型糖尿病」という病名をおもちの方でした。わたしが夜勤の時、その方の病状が徐々にわるくなっていきました。今まで多くの方をみとってきましたが、この方には強く生きてほしいと思ったのです。目の前にいるのは、まるで未来のわたし自身に見えました。

 

看護師と患者の間にあるべき境界線があやふやとなり、「こうしたら助かるのではないか」「この手段がまだ残っているのではな

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