連載

2024.10

【第2回】海を撮りながら思うこと

戻りたい、あの日はいつも

「ねぇ、あの日に戻りたいと思ったことってある?」なんて言われたことは、これまで何度かあったように思います。毎回答えに窮してしまっていたのですが、基本的にはそんな日は僕にはありませんでした。まだアイデンティティーの無かった頃に一大決心をして、写真の道を歩み始めた日からずっと前を見て、前に進むことでしか自分の価値を確立できないような人生の歩み方でした。倒れても明日さえ迎えればなんとかなる。そう思ってずっと生きてきました。

 

この連載を始めるに当たり人生を振り返っていて、ふと考えたのが、戻りたい日はあるか、ということでした。1日だけ「あぁ、あの日に帰りたいな」と僕が思う日。それは亡くなった祖父と祖母がいた、あの日です。

 

父親のいなかった僕は、祖父母に生後間もない頃から育ててもらいました。2人にはずっと心配をかけ続けていたと思います。別れの時まで、僕は感謝を伝えられませんでした。

 

今にして思えば、あの日の自分が描いた夢の遥か先に自分はいる。1型糖尿病だったからこそ生きる楽しさ、助けてもらった方々への感謝を強く感じられる。しかたないじゃん。もう進むしかない。それなら、これが自分の人生だと思える最後に向かって進みたい。いつか「僕はあれからこんなにもいろんな人に助けられて、頑張ってこられた。心配かけたけど、1型糖尿病だっ

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