連載

2024.10

【第10回】バードウォッチングだより

小さな体でヒマラヤ山脈を越えるアネハヅル

今回はツル類では最小で、全長が約95㎝のアネハヅルをご紹介します。羽色が美しく、立ち姿が姉様のように気品があるため姉羽鶴とも呼ばれているようです。額から顔、胸にかけて黒く、目の後ろから房状に純白の飾り羽があります。頭頂とその他の部位は青灰色で目が赤く、名前の通り、なかなかの気品を漂わせています。

 

アネハヅルは、モンゴルで繁殖する個体群がヒマラヤ山脈を越えてインドへ渡り、越冬することが知られています。ヒマラヤ山脈と言えば標高8000mもあり、極寒で酸素が薄く、強風も吹いています。このような厳しい自然環境の中、どうして小さな体のアネハヅルがヒマラヤ越えを成し遂げることができるのでしょうか?

 

アネハヅルには特別な進化の秘密がありました。アネハヅルの血液には酸素との結合能力を高めたヘモグロビンがあり、それが酸素の薄い状態での飛行を可能にしているのです。渡りの時期には特定の場所を選んで上昇気流を捉え、それに乗ってヒマラヤの山々を越えて行くようです。アネハヅルのヒマラヤ越えは、まさに自然界の壮大なスペクタクルですね。

 

日本では決まった時期に見ることはできず、迷鳥(本来の生息地ではないところに現れる鳥)として渡来します。

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