連載

2024.11

【第3回】海を撮りながら思うこと

染みる身を知る

気が付けば当然のようにカメラを構えているこの頃ですが、いわゆるプロといわれる仕事を始めたのが19歳の時。当時はボクサーになるというアイデンティティーを失い、打ちひしがれて焦りもありました。大学の募集掲示板で見つけた写真館の婚礼撮影の仕事が、僕のカメラマン人生の始まりです。

 

まさに知らぬが仏。技術は気合で何とかできていたのかもしれません。しかし血糖管理は違いました。撮影は長時間にわたり集中力とパフォーマンスを必要とする仕事です。おざなりにしてきた血糖管理が壁となって立ちふさがりました。高血糖で疲労がたまれば集中力を阻害し、低血糖に陥れば思考が回らず撮影すら困難。終われば体力を全て使い果たしてヘトヘト。襲われたことのない疲れに、自信が崩れ落ちました。糖尿病って甘いやつに甘くないんですよね。

 

しかし、もう二度と1型糖尿病を理由に諦めたくない──。その一心で自分の身の程を知ることに徹しました。緊張しやすいため、撮影中に血糖値が下がりにくいことは、この頃に初めて自覚しました。低血糖を恐れすぎず、かつ絶対に低血糖にならない食事量とインスリンの数値を探し、そこから体調に合わせた追加インスリンと補食のタイミングを見つけ出しました。自分に合わせた血糖管理ではなく、社会に合わせた血糖管理へ。いろんな悔しい出来事が身に染みました。そうして19歳の年の9

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