連載

2025.01

【第5回】カフェから見える風景

当店で初めて自分で注射ができた子

時はコロナ禍、小児糖尿病キャンプはどこも中止になっていました。そんな折、神奈川県から小学2年生のお子さんが来店されました。

 

コロナ禍に来店する子どもたちのほとんどは、“インスリン注射をしている人が自分一人しかいない”といった環境にいて、わたしの知る限り“自分以外の誰かがインスリン注射をしているところなど見たことがない”のです。

 

いくら言葉で説明しても体験に勝るものはありません。注射をしているのは自分だけじゃないことを、リアルに感じてほしいと思っていました。

 

そのため、お子さんが来店されたときには「わたしも何か食べようかなぁ」なんてわざとらしく言いながら、おなかがすいていなくても何かを食べて、インスリンを打っているところを見せるようにしていました。「一緒だよ。あなただけじゃないよ」。言葉じゃないメッセージです。

 

その日もいつものようにカウンターの外に出て、子どもから見えるところで注射をしました。その後、その子がお母さまと一緒にソファに座り、長い時間何かを話しながらインスリンを打っていました。

 

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