連載

2025.06

【第10回】海を撮りながら思うこと

闘わないからだ

写真の現場に出て十数年がたちました。写真家やフォトグラファーと呼ばれるようになっても、ボクサーの魂はずっと燃え続けていて、それを原動力として頑張ってきました。ボクシングをしていた当時は、足を使って絶えず動き回る「アウトボクシング」というスタイルが好きだったので、階段はいつも爪先立ちで上るなど、日々闘うための体づくりを心掛けていました。

 

時はたち、現在は1型糖尿病との付き合い方の変化や、たくさんの経験に恵まれて、僕のこころと体は優しくなってきたのでした。

 

そうなんです、十何年前と比べて、体も丸くなりました。例えるならば、高校生当時の僕の体は日本刀、今は棒やすりくらいの鋭さです。すりこぎ棒になる未来が容易に脳裏に浮かびます。あれほど好きだった階段も、今ではこりゃ幸いとばかりにエレベーターへと吸い込まれます。カメラマンの駆け出しの頃は、無理な撮影ポジショニングでも強引に足で詰めていくようなスタイルでしたが、年齢を重ねた今は経験と知識も撮影に織り交ぜることができるように。なんということでしょうか。成長と共に失われた運動量が、少しずつ目に見えるような年になっていました。ただ、ハードな撮影現場が多いのはずっと変わらず。特に夏場はかなり鍛えてから臨む必要がある現

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