連載

2025.08

【第12回】海を撮りながら思うこと

尊厳を守る闘いの代償(後編)

「おい! 知ってるぞ! 病気君!」

 

この言葉は、それまで受け流してきた僕の限界を超え、初めてその子に立ち向かっていきました。インスリンが必要なこと、持病があること。小学生の拙い言葉では、その子へ何も伝えることができませんでした。

 

大勢の中、大声で呼び止められてビックリした震えも、もう止まっていました。その子に殴り掛かり、押し倒したところで「ダメだよ! 絶対ダメだよ!」と、クラスの友人が間に入って、僕の手を引いてくれたのです。

 

午後の授業を迎え、ぐらぐらと後悔が募る中、放課後、教師に呼び出されることを覚悟していたのですが、何もありませんでした。右手の中指の付け根が腫れて動かなくなった感覚を、今でも覚えています。少し時間がたって、その子と和解したときに、「理解のできない行動を不思議に思って、ちょっかいを出した。けんかをするつもりは無かった」と、無邪気な悪意を知りました。子どもの世界って、なんて残酷なんだろうと思います。うまく説明ができなかった自分を、今でもずっと後悔しています。

 

そしてボクシングに本気で取り組み、同じ痛みを両拳に覚えたとき、小学生

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