連載

2025.09

【最終回】海を撮りながら思うこと

思うこと、思っていたこと、思えること

潮風に揺られながら、ふと思った。僕は1型糖尿病という病と共にあり、家族にはずっと心配をかけ続けてきて、それが僕にとって普通の人生だった。でも母は違う。家族は違う。知らない病気の対応を求められる人生を送ってきた。僕の夢はずっと、病気を一切しない子どもになることだったと今では思う。そうすれば、母は自分の休息のために有給休暇を使えるようになって、祖父と祖母は代わり番こに深夜まで僕の血糖値の管理をしなくて済む。1型糖尿病じゃなければ、もっと家族は普通の生活をしていたのではないか。僕が生まれてこなければ、誰もが幸せだったんじゃないかとすら思う時もあった。けれど、そんな思いを全て吹き飛ばす言葉を僕はずっともらっていた。

 

「生まれてきてくれてよかった」

 

「生きてさえいればそれでいい」

 

ずっと僕はその言葉に守られて生きてきたのだと思えるようになった時、絶対に強くなるとこころに決めた。そうして今では、信念になっている。支えてくれた方々へ胸を張って、「生きていてよかった」と言える人生を送りたいと思う。命の限りを尽くして、強く生きたいと思う。そしてどんなにつらくても、どんなに苦しくても、「生きてさえいれば」と僕は思え

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