特別企画2

2024.08

1型糖尿病はなぜ起こるのか、どこまで分かってきたのか。

はじめに

 

100年以上前にわたしたちが手にしたインスリンは、1型糖尿病をもつ人々の命を救うだけではなく、1型糖尿病があってもその気になれば一流のアスリートを目指すことも可能にする奇跡の薬となりました。多くの人の生命予後を劇的に改善したインスリンによる1型糖尿病の治療ですが、低下してしまったインスリン(ホルモン)分泌を補充する治療にすぎないこともまた事実です。われわれの体が必要とするインスリン量は、食事や運動、ホルモンの日内変動、月経周期、炎症・ストレスなどによって、時々刻々と大きく揺さぶられるため、正常に機能する膵(すい)臓のホルモン分泌細胞による繊細な調整なくしては血糖値を安定させるのは至難の業となります。

 

リアルタイムCGM(持続血糖モニター)と連動するインスリンポンプなど、近年の医療機器の進歩には目を見張るものがありますが、わたしたちの「究極の目標」は、「インスリン分泌を少しでも維持すること、また発症の遅延や阻止、さらには発症後の治癒」にあります。そのためには膵β細胞のインスリン分泌機能がどのように失われるのかを解明し、そのメカニズムに直接作用する治療を確立する必要があります。

 

今回の特別企画では「1型糖尿病はなぜ起こるのか?」をテ

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