連載

2025.07

【第11回】海を撮りながら思うこと

尊厳を守る闘いの代償(前編)

僕は1型糖尿病ということをほとんど誰にも知らせずに、成人まで過ごしました。小中高と血糖値の管理は、ずっと保健室や職員室。周りに話したところで思うような理解は得られないのではないか?話したことで確定してしまう事実を乗り越えられないのではないか? そんな不安を家族と共有していました。

 

そして今でも忘れない、およそ20年前のこと。当時の情報リテラシーは、今と大きくかけ離れていました。入院した病室で「かわいいねぇ」と優しく語りかけてくれたご高齢の方は、僕が「糖尿病」だと知ると「あらま、ぜいたくな家に生まれたのね」と、すごく冷たくなったのです。その言葉を聞いた母は、すぐに同室の人たちに「1型糖尿病」の説明をしてくれました。

 

同時期の小学校生活では、保健室通いの僕を目ざとく見つけて絡んでくる子が1人いました。恐らく、いつも同じ時間に保健室にいる僕を不思議に思ったのでしょう。いつも突っかかってくるその子の言葉は、日増しに度を超えるようになってきました。僕は相手にせず受け流していたのですが、ある日、昼休みを終えるチャイムが鳴って、一斉に児童が集まる校舎の吹き抜けのど真ん中。その子から「おい! 知ってるぞ! 病気君!」と呼び止められました。僕は初めて「もう引けない」

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